新型コロナウイルス感染拡大防止のため、Webにて開催させていただきます。
パソコンやスマートフォンからご視聴いただきます。
耳の日について
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会 京都府地方部会長
京都大学大学院医学研究科 耳鼻咽喉科・頭頸部外科教授
大森 孝一
3月3日は「耳の日」です。「耳の日」は、聞こえと言葉に障害がある方のために少しでもお役に立ちたいという願いを込めて、日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会の提案により昭和31年(1956年)から始まりました。毎年「耳の日」に、都道府県ごとに、難聴で悩んでいる方々の相談や、一般の人びとにも耳の病気のことや、健康な耳の大切さを知っていただくための活動を行っています。今年で68回目になります。ちなみに、3月3日は、電話の発明者であり、ろう者の教育者であったグラハム・ベルの誕生日でもあります。
「耳の日」記念公開講演会では、耳の仕組みや耳の病気、コロナ禍と難聴についてお話しします。この様な講演会を通じて、耳の大切さをわかっていただき、困っている症状の解決に少しでもお役に立てればと思います。例年は講演会の後に「耳の病気の相談会」をご用意していましたが、新型コロナウイルス感染症の流行により、本年もやむなく中止とさせていただきます。この3年間、非接触の非日常を体感すればするほど、人と会って話をすることの大切さを痛感しています。そして人の声を聞いたり理解するにはやはり耳は大切です。直接お会いしてお話しするのは困難な状況ですが、オンラインでの講演を準備しておりますので、是非お聞きいただければと思います。
講演1
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![]() コロナ禍と難聴 京都府立医科大学 耳鼻咽喉科・頭頸部外科学教室 講師 瀧 正勝 先生 3年前に始まったコロナ禍は何度も感染の波が押し寄せ、多数の重症・死亡者が出ています。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が肺炎や血栓症、心筋炎、脳の障害を起こすことは報道などでご存じでしょうが、少数ながらも難聴やめまい、中耳炎をきたすことがあります。こういった疾患自体に関することのほか、人々の精神や社会にも大きな影響を及ぼしています。なかでも難聴のある方は多大な影響を受けています。(空気感染も指摘されていますが)飛沫からの感染症ですので、日本のみならず、世界中でマスクの装用が必要となりました。人は耳からの聴覚情報だけでなく、相手の口元・表情などの視覚情報も使って日常のコミュニケ―ションを行っています。お互いマスクをつけていますので、マスクにより相手の声が小さくなったり、聞き取りにくくなったりするだけでなく、口元・表情もわかりにくくなっています。したがって、難聴のある方と話す場合、相手の方は、はっきり・ゆっくり話すような配慮が必要です。また補聴器を装用されている方は、マスクの付け外しの際に補聴器が落下して破損するなどの危険性もあります。日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会もそのことについて指摘しており、対応策も動画で配信しております。今回の講演では、まずCOVID-19が難聴や中耳炎を起こした報告について、さらに難聴のある方とマスクの関係、補聴器の落下についての一般的に知られている内容についてお話したいと思います。 |
講演2
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![]() 耳を大切に 京都大学大学院医学研究科 耳鼻咽喉科・頭頸部外科学 教授 大森 孝一 先生 人と人とのコミュニケーションには言葉を聞くことと話すことが大切です。そのため、耳はとても大切な感覚器官です。耳は外耳、中耳、内耳に分けられます。耳の入り口は外耳道といわれ、その奥に鼓膜があります。鼓膜の奥は中耳といわれ、さらに奥には、内耳と呼ばれる部位があります。内耳には音を聞くための蝸牛と、からだのバランスをとる前庭や半規管とがあります。音は外耳道から入って鼓膜を振動させ、その振動が中耳にある3つの耳小骨に伝わって、蝸牛に伝わります。そして、蝸牛の有毛細胞に振動が加わると、細胞が興奮して電気信号に変換され、聴神経へ伝わり、さらに脳へ伝えられます。この信号が、脳の中で音や声や言葉として認識されます。 鼓膜や耳小骨など中耳に問題がある難聴は伝音難聴と呼ばれ、薬や手術によって改善できる場合があります。急性中耳炎、滲出性中耳炎、慢性中耳炎などがこれにあたります。最近、伝音難聴に対する手術は大きく進歩しています。内視鏡を使った中耳炎の手術や、鼓膜穿孔に対する鼓膜の再生療法が保険診療でできるようになり、それぞれの患者さんに適した手術を選びやすくなりました。 一方、内耳にある蝸牛やその奥の神経に問題がある難聴は感音難聴と呼ばれます。急性感音難聴と言われる突発性難聴、騒音性難聴などでは発症後、できるだけ早くに治療する必要があります。 遺伝性難聴などで生まれながらに重い難聴があると、言葉を覚える過程に支障が出ることがあります。そのため、赤ちゃんや子供さんの難聴をできるだけ早く発見して、補聴器や人工内耳で聞こえを補ったり、言語訓練で発音をなおしていく必要があります。また、年をとって聞こえが悪くなる加齢性難聴では、コミュニケーションが取りにくくなると、生活の質が低下します。中年期の難聴があると、認知症のリスクが高くなることもわかってきました。 講演ではまず聞こえの仕組みと耳の病気について解説し、乳幼児の難聴と家庭でできる検査、高齢者の認知症と難聴の関係、補聴器や人工内耳についてもお話しします。日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会では、市民の皆さんに、健康な耳で日常生活を楽しんで頂くための活動を行っています。皆さん、耳ときこえを大切にして下さい。 |
※耳の相談会は、Web開催につき今回はございません。